22巻 第2号 2008年9月


巻頭言

    会長就任にあたって

                    佐々木良一… 1

研究論文

    不審行動検知による犯罪抑止の検討

       ―万引きの分析と防止策

大野 宏、中嶋信生、加納 梢… 3

 

    日本企業に本当に必要な内部統制の実務

大井正浩…16

 

    学術コンテンツの創作と公表(出版)に関する

    権利の帰属と社会的な評価との整合性

児玉晴男…29

 

解説

特集「危機管理研究会

    新型インフルエンザの危機管理

岡安邦男…41

 

ニュースレター

………………………………………………51

 


不審行動検知による犯罪抑止の検討

万引きの分析と防止策

Study of Crime Deterrence by Detecting Suspicious Behavior

An Analysis of Shoplifting and the Preventive Measures

電気通信大学人間コミュニケーション学専攻、綜合警備保障株式会社   大 野   宏

 The University of Electro-communications, Sohgo Security Services Co.,Ltd.   Hiroshi OHNO

              電気通信大学人間コミュニケーション学専攻  中 嶋 信 生

 The University of Electro-communications Nobuo NAKAJIMA

電気通信大学人間コミュニケーション学専攻  加 納   梢

                The University of Electro-communications    Kozue KANO

要 旨

最近、安全・安心に対する関心が非常な高まりを示し、防犯はこれからの日本社会における重要課題となってきた。情報ネットワーク分野でも、不正使用対策に対して多くの検討がなされている。しかし、ITCの分野では盗難などのような「物理的」不正行為については、ほとんど未検討といっても過言ではない。筆者らは、万引きを中心とした犯罪の動向について調査し、対策を検討してきた。それらの結果は、ICTネットワークにおける広い意味でのセキュリティ対策にも参考になると考える。

万引きの調査は、国の犯罪統計及び全国的な調査結果「小売・サービス業における万引きの実態とその対策」「ドラッグストアにおける万引きの実態とその対策」「万引についての全国青少年意識調査」、ならびに実際に捜査を担当した刑事OB、万引きGメンに聞き取りにより行った。万引きが全犯罪の中で検挙件数も多くを占めかつ再犯性が高く、従来の万引き対策では十分効果を発揮していないことが明らかとなった。そこで、犯罪者の行動メカニズムを科学的に究明し、犯罪行動の一連の過程を掌握し犯行を事前に覚知すると共に、犯罪の未然防止を図るために開発中の新しい不審行動自動検知システムを提案するための基本実験結果について述べる。

 

キーワード

 初発型犯罪、防犯環境設計、犯罪機会論、窃盗犯3原則、不審行動自動検知

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日本企業に本当に必要な内部統制の実務

Needed install of real Internal Control to Japanese Business

中央大学・研究開発機構  大 井 正 浩

Development Initiative, Chuo University   Masahiro OHI

要 旨

 法律や監査監督当局の基準を巡って内部統制の議論が盛んである。しかしそれらは、本来企業が整備すべき内部統制の内容からすれば極一部の形式を示しているに過ぎない。金融庁基準は、本年20084月開始事業年度から適用されるので、短期的な部分適応は必要やむを得ないとしても、そのことによって内部統制全体を矮小化することは避けなければならない。筆者は、金融庁基準が公認会計士の会計監査のための基準であり、そのための基本的性格と限界について別論文で明らかにした。本論では、企業が本来整備すべき内部統制の内容を、実務的方法論の観点から明確にして行きたい。具体的には、会社法の遵守、標準手続の充実、内部通報制度の整備・導入、内部監査の強化などである。

 

キーワード

 内部統制、金融庁基準、会計監査、財務報告、内部監査、会社法、業務統制、標準手続、内部通報制度、監査人の独立性

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学術コンテンツの創作と公表(出版)に関する

権利の帰属と社会的な評価との整合性

Consistency between Ownership of Rights and Social Evaluation

in Creation and Publication of Academic Contents

メディア教育開発センター/総合研究大学院大学  児 玉 晴 男

                                National Institute of Multimedia Education/

 The Graduate University for Advanced Studies    Haruo KODAMA

要 旨

 学術論文は,実験データのねつ造,改ざんや剽窃が発見されると,公表の取り下げがなされ,論文の創作者である著作者に対して社会的な制裁がなされる対象になる.学術研究報告も、同じ関係にある.他方,学術論文や学術研究報告の創作と公表は,次の研究資金を獲得するうえで,研究業績の評価対象になる.さらに,査読付きの学術論文や出版された学術研究報告書(学術図書)は,受賞の対象になる.それら相反する二つの社会的な評価は,同じ対象に対して与えられることもある.その関係は,科学技術倫理に関する問題および著作権等に関する問題が交錯していよう.ここで,学術的な情報は,学術雑誌と学術図書によって提供される.また、情報環境において,学術論文が電子ジャーナルで公表され,学術研究報告がウェブで公開されてきている.そこで,学術的な情報は,電子ジャーナルと電子書籍とが統合化された情報環境の中で権利管理される学術コンテンツになろう.本稿は,学術コンテンツの創作と公表に関する社会的な評価について、権利の帰属との整合性の観点から考察する.

 

キーワード

 学術コンテンツ,創作,公表(出版),著作権,科学技術倫理

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