第22巻 第3号 2008年12月 |
巻頭言 コントロールとマネジメントへ 〜規模,標準,密度の設計〜 能勢豊一… 1 研究論文 内部統制のための多リスク・多関与者を考慮した 守谷隆史、千葉寛之、佐々木良一… 3 情報セキュリティ確保に対する ネットワーク利用者の価値評価に関する研究 櫻井直子…15 SNSモデルにおける「人のつながり」の洞察 小島孝夫、陳 立行、板倉征男…28 解説 特集「デジタル・フォレンジック特集その1 (法制度動向及び内部統制関連)」 フォレンジックと実体法 林紘一郎、石井夏生利…37 リモート・フォレンジック・ツールの許容性 石井徹哉…40 「世界中の情報」とデジタル・フォレンジック 小向太郎…43 内部統制にとって重要性を増すデジタル・フォレンジック
ニュースレター ………………………………………………53 |
内部統制のための多リスク・多関与者を考慮した費用対効果の評価法の提案と適用BehaviorProposal and Application of Evaluation MethodConsidering Various Risks and Stakeholders for the Internal Control |
東京電機大学 守 谷 隆 史 Tokyo Denki University Takashi MORIYA 日立製作所 千 葉 寛 之 Hitachi, Ltd. Hiroyuki CHIBA 東京電機大学 佐々木 良 一 Tokyo Denki University Ryoichi SASAKI |
要 旨 近年,財務報告への虚偽記載により,大企業が倒産・上場廃止に追い込まれる事態が発生している.このような状況の中,企業では財務報告の信頼性を確保するために内部統制の構築を進めている.これまで行われてきた内部統制は,財務諸表におけるリスクの軽減を重視する傾向にある.しかし,内部統制の構築には,財務諸表リスク以外にも,効率性低下リスク,対策コスト増大リスクなど,多様なリスクを考慮する必要がある.また,意思決定を行う経営者以外にも,従業員をはじめとした利害関係の異なる多くの関与者が存在しており,コミュニケーションをとりながら合意形成へ導くことは容易ではない.このような問題を解決するために本稿では,著者らが開発したリスクコミュニケーションツール「多重リスクコミュニケータ」を用いて,関与者間でのリスクコミュニケーションを想定した,内部統制にも使われるリスクアセスメントとリスク対策の費用対効果の評価法を提案する.また,「大学における内部統制(公的研究費の不正利用問題)」をモデルケースとして評価実験を行った結果を報告する. キーワード リスク,リスクコミュニケーション,リスクマネージメント,内部統制 ------------------------------------------------------------------------------------ |
情報セキュリティ確保に対するネットワーク利用者の価値評価に関する研究Quantifying the Value of Information SecurityBased on Internet Users' Stated Preferences |
早稲田大学 櫻 井 直 子 Waseda University Naoko SAKURAI |
要 旨 情報セキュリティの確保は、ネットワークを利用するすべての者が個人の責任において行うべきものとされている。企業のニーズに応え、個人情報保護対策のための被害額算定等の研究は進んでいるが、ネットワーク利用者の立場に立った研究はあまり例をみない。本稿はネットワーク利用者の視点に焦点を当て、利用者の情報セキュリティに対する支払意思額を算定することにより、情報セキュリティの客観的・定量的な評価を提案するものである。具体的には、ネットワーク利用者に対してアンケート調査を行い、CVM(Contingent Valuation Method)を分析手法とし、支払意思額(Willingness to Pay : WTP)を推定した。10種類の情報セキュリティ被害のシナリオに対する調査回答を分析した結果、WTPの中央値は4,711円から13,022円、平均値は14,056円から69,647円となった。算出された中央値は市販のセキュリティソフトとほぼ同等の金額であり、情報セキュリティ評価指標としてみることができると考える。また、どのような変数がWTPに影響を与えているかを求めるため、15変数を加えて分析した。「年収」、「セキュリティ対策」、「就労者」、「情報関連業種従事者」、「インターネット利用時間」、「被害経験」はWTPにプラスに影響すると考えていたが、「年収」、「セキュリティ対策」以外の属性にはマイナスの影響が多くみられた。 キーワード 情報セキュリティ、CVM、生存分析、支払意思額、定量評価、個人情報 ------------------------------------------------------------------------------------ |
SNSモデルにおける「人のつながり」の洞察An Insight of the Tie on the Social Networking Service Model |
情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科 小 島 孝 夫 Institute of Information Security Takao KOJIMA 日本福祉大学 情報社会科学部 陳 立 行 Faculty of Social and Information Sciences, Nihon Fukushi University Lixing CHEN 情報セキュリティ大学院大学 情報セキュリティ研究科 板 倉 征 男 Institute of Information Security Yukio ITAKURA |
要 旨 SNSのようなWeb上のコミュニケーションサイトで,特定のユーザに着目した分析を実現するために,ユーザの行動履歴を用いた「人のつながり」の定量化する洞察手法を提案する. 実証実験により得た結果より本手法の有効性を示す. キーワード 行動履歴,アクセスログ,社会的ネットワーク,定量化,可視化,非対面コミュニケーション ------------------------------------------------------------------------------------ |