23巻 第1号 2009年4月


巻頭言

    意識レベルとコミュニケーション

                     松浦幹太 1

研究論文
Research papers

    ログ管理の意義とフレームワークに関する研究

    
A Study on the Meaning and the Framework of Log Management

瀧澤正樹、島田裕次… 3
Masaki TAKIZAWA and Yuji SHIMADA        
 

    金融庁内部統制監査基準の性格と課題

    The Nature and Problems of the Internal Control Guideline of Financial Report

大井正浩…15
Masahiro OHI      
 

    不審行動検知による万引き防止策の一提案

    
A Proposal of Shoplifting Countermeasures by the Suspicious Activity Detection

大野 宏、中嶋信生、佐藤洋一、小林貴訓、杉村大輔、加納 梢…26
Hiroshi OHNO, Nobuo NAKAJIMA, Yoichi SATO, Yoshinori KOBAYASHI,     DaisukeSUGIMURA and Kozue KANO      
 

 

研究ノート
Research note

    人体通信技術を用いた制服着脱検知システムの開発
    −制服を悪用した犯罪に対抗するために−

    
Development of the Detection System for Uniform Dressing/
      Undressing Using Intra-body Communication Technology
      – To Prevent a Crime Abusing Office Uniforms –
 

藤川真樹、西垣正勝、吉沢昌純、古澤健治、辻井重男…39
Masaki FUJIKAWA, Masakatsu NISHIGAKI, Masasumi YOSHIZAWA,      
Kenji FURUSAWA and Shigeo TSUJII      

 

解説
Commentaries

特集デジタル・フォレンジック特集その2
    
関連ビジネス動向と最新技術動向)」

    訴訟社会を支えるリーガルテクノロジー

    
Legal Technology to Support Litigious Society

守本正宏…49
Masahiro MORIMOTO      

   「フォレンジック調査」を定着させる試みについて

    
Attempt to be Established ofForensics Investigation

萩原栄幸…53
Eiko HAGIWARA      

    フォレンジック関連ビジネス動向

  
Trend of Business Related to Forensics

向井 徹、足立正浩57
Toru MUKAI and Masahiro ADACHI     

    クラウドコンピューティング時代に必要な
    
デジタル・フォレンジック

    
Digital Forensics in Cloud Computing Era

秋山昌範61
Masanori AKIYAMA     

    デジタル・フォレンジック関連技術の研究動向

    
A Survey on Research Activities for Technologies on Digital Forensics

上原哲太郎68
Tetsutaro UEHARA     

 

 

ニュースレター
Newsletter

………………………………………………77

 


 ログ管理の意義とフレームワークに関する研究

 A Study on the Meaning and the Framework of Log Management

 中央大学大学院      瀧 澤 正 樹

 Graduate School of Science and Engineering, Chuo University   Masaki TAKIZAWA

 東洋大学       島 田 裕 次

              Toyo University         Yuji SHIMADA

要 旨

ログは,本来,コンピュータ上で行われた処理や操作を記録し,システムが正常に稼動していることを確かめるためのものであった.ログ管理に関心が持たれ始めたのは,不正アクセス禁止法が制定された時期である.20054月に完全施行された「個人情報の保護に関する法律」によって,個人情報を正しく取り扱い,情報漏洩の対応策を講じることの重要性が増大した.さらに,金融商品取引法の改正によって,200841日以後に開始する事業年度から内部統制報告制度が開始した.こうした動向を受けて,個人情報保護や内部統制の状況を確認し,必要な情報を分析することによって,検出した問題の原因究明・再発防止を行うことが必要になり,そのためのログ管理が重要になっている.
  
ログ管理は,個人情報保護や内部統制報告制度への対応の中で,それぞれ実施されている場合が多く,様々な目的で実施されるログ管理を一元的に管理するための明確なガイドラインや手法が確立しているとは必ずしもいえない.そのため企業では,ログ管理の方法や管理方法等の整合がとれず,ログ管理が効果的かつ効率的に行われていないのが現状だといえよう.
  本研究では,
PDCAPlan-Do-Check-Act)サイクルを用いて,ログ管理を組織内で一元的に行うためのフレームワークを提案する.PDCAサイクルを実施することによって,効果的かつ効率的なログ管理を行うことが可能になる.加えて,法令等の遵守,抗弁や主張の根拠・証拠の確保という意味合いが強いログ管理“守りのログ管理)と企業の業務効率化の促進や企業経営に役立つログ管理“攻めのログ管理)のバランスのとれたログ管理の構築に資することが可能になる.

 

キーワード

 ログ管理,PDCAサイクル,個人情報保護法,情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)
,内部統制

------------------------------------------------------------------------------------

 

金融庁内部統制監査基準の性格と課題

The Nature and Problems of the Internal Control Guideline of Financial Report

中央大学・研究開発機構  大 井 正 浩

Development Initiative, Chuo University    Masahiro OHI

要 旨

内部統制の整備・充実とその監査が議論を呼んでいるが、その中心となっている金融庁企業会計審議会の内部統制監査基準は、企業の決算に係る公認会計士監査のためのものである。現在最重要な問題であることは論を待たないが、それと同等以上に本来大切なのは企業が不祥事などを起こすことなく、信頼性の高い経営成績を実現する企業業務全体のことであるのに、それに係る内部統制の役割や目標達成のための議論は後方に押やられている。本論では金融庁基準が、その基本的性格は財務報告と公認会計士監査のために特化した基準であることを示し、限界と課題を明確にする。そして財務報告と公認会計士監査に特化した矮小な議論に止まらず、企業業務の全般にわたる統制の検討が進められることも必要であることを述べる。

 

キーワード

 内部統制報告書監査、財務報告、監査の基準、公正妥当、公認会計士監査、矮小化

------------------------------------------------------------------------------------

 

不審行動検知による万引き防止策の一提案

A Proposal of Shoplifting Countermeasures by the Suspicious Activity Detection

電気通信大学、綜合警備保障株式会社   大 野   宏

 The University of Electro-Communications, SOHGO SECURITY SERVICES CO.,LTD.   Hiroshi OHNO

電気通信大学   中 嶋 信 生

The University of Electro-Communications   Nobuo NAKAJIMA

東京大学   佐 藤 洋 一

University of Tokyo     Yoichi SATO

埼玉大学   小 林 貴 訓

Saitama University Yoshinori KOBAYASHI

東京大学   杉 村 大 輔

University of Tokyo  Daisuke SUGIMURA

電気通信大学    加 納   梢

The University of Electro-Communications        Kozue KANO

要 旨

筆者らは「不審行動検知による犯罪抑止の検討――万引きの分析と防止策――」[1]の論文で、国の犯罪統計及び万引き防止を図る2つの団体の全国的な調査結果に加え、国内外の防犯理論及び実際に捜査を担当した刑事OB、万引きGメンに聞き取り調査を行った。その結果、万引きが全犯罪の中で検挙件数も多く、経済的損失も年間数千億円に及びかつ再犯性が高く、国の治安上からも対策が重要であるが、最も効果的である万引きGメンを増やすなどの従来の万引き対策では、経済的に限界があることは明らかである。
  
そこで、犯罪者の行動メカニズムを科学的に究明し、犯罪行動の一連の過程を掌握し犯行を事前に覚知することで、犯罪の未然防止を図る新しい不審行動自動検知システムの検討を進めている。
  本論文では、万引きや内部犯
(内引き)の実際の手口の詳細、現在行われている防犯対策とその課題、万引きに応用できる可能性のある人の行動検知技術について調査と課題の抽出を行うとともに、不審行動自動検知システムの開発につながる新たな提案を行う。

 

キーワード

 万引き手口内引き手口防犯対策機EAS不審行動検知

------------------------------------------------------------------------------------

 

人体通信技術を用いた制服着脱検知システムの開発
−制服を悪用した犯罪に対抗するために−

Development of the Detection System for Uniform Dressing/Undressing Using Intra-body Communication Technology - To Prevent a Crime Abusing Office Uniforms -

中央大学研究開発機構/綜合警備保障株式会社    藤 川 真 樹

 R&D Initiative, Chuo University/Sohgo Security Services Co.,Ltd.     Masaki FUJIKAWA

静岡大学創造科学技術大学院        西 垣 正 勝

Graduate School of Science & Technology, Shizuoka University   Masakatsu NISHIGAKI

東京都立産業技術高等専門学校        吉 沢 昌 純

Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology  Masasumi YOSHIZAWA

株式会社三矢研究所       古 澤 健 治

Mitsuya Laboratories Inc.       Kenji FURUSAWA

中央大学研究開発機構/情報セキュリティ大学院大学      辻 井 重 男

R&D Initiative, Chuo University/Institute of Information Security         Shigeo TSUJII

要 旨

不正に入手した制服を着て従業員になりすまし、金品などを詐取するという事件は、古今・洋の東西を問わず発生している。このような犯罪に対抗するためには、我々は以下の機能を備えたシステムが必要であると考えている:@制服Aは、制服Aを着用した人が従業員Aであることを認識できる。A制服Aは、従業員Aが制服Aを着用している間は、従業員Aであることを証明できる機能をアクティブにする。B制服着用者が本物の従業員であるか否かを、誰でも容易に確認できる。今回我々は、上記システムの基盤となる、新型の「制服着脱検知システム」を開発した。このシステムは、制服を着用しているか否かを判断するセンサーとして、人体通信技術を用いている。これにより、超音波センサーを用いた従来システムの問題点を解決している。我々は、実験および制服への実装により、実用性、信頼性、安全性が高いことを示した。

 

キーワード

 ソーシャルエンジニアリング、制服の着脱検知、人体通信技術

------------------------------------------------------------------------------------